
今回のご相談は『恋人の試し行為に悩んでいる』という方にお話しした内容を詳しくまとめたものです。

相談者さんは、言葉にして自分の気持ちを整理された後
私の目の前でお相手さんの全SNSをブロック。
非常にスッキリとされていました。
「試し行為」は、恋愛関係の中で誰しもが一度は経験する、あるいはしてしまう可能性のある行動です。しかし、これが繰り返されると、お互いの信頼関係を深く傷つけ、関係を破綻させてしまうことにもつながります。
この記事では、試し行為とは何か、なぜそのような行動をしてしまうのか、そしてどう対処すればいいのかについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
試し行為とは?その心理と具体例
まず、試し行為とは何でしょうか?
試し行為とは、**「相手の愛情や忠誠心を試すために、意図的に行う行動」**のことです。これは、言葉だけでなく、行動や態度として現れることもあります。
このような行動の裏側には、「本当に私を愛しているのか?」「見捨てられるのではないか?」という強い不安が隠されています。
そして、その不安を打ち消すために、相手に「私はあなたを愛しているよ」と再確認させようとするのです。
試し行為の具体例
試し行為は、一見するとただのわがままや、意地悪な行動に見えるかもしれません。しかし、その根底には、相手への依存や、愛情への渇望があります。
言葉による試し行為
- 「もし私が病気になったら、看病してくれる?」
- 「私と仕事、どっちが大事なの?」
- 「どうせ私のことなんて、もう好きじゃないんでしょ?」
- 「他の異性と仲良くしないで」と過剰に束縛する
- わざと連絡を返さずに、相手の反応を確かめる
行動による試し行為
- 急に不機嫌になり、理由を言わずに無視をする
- 相手が困るような無理な要求をする
- 「もう別れる」と一方的に言って、相手の引き止めを期待する
- わざと他の異性の話をして、相手の嫉妬を誘う
- 自傷行為をほのめかしたり、実際に傷つけたりする
これらの行動は、一時的に相手の愛情を確認できるかもしれませんが、根本的な不安は解消されません。むしろ、関係に疲弊し、破綻させてしまう危険性をはらんでいます。
なぜ人は試し行為をしてしまうのか?その心の原因
では、なぜ人は、大切な恋人に対して、このような試し行為をしてしまうのでしょうか?その根底には、いくつかの心理的な原因が考えられます。
1. 自己肯定感の低さ
「自分には愛される価値がない」「どうせいつか嫌われてしまう」という自己肯定感の低さが、試し行為の最大の原因の一つです。
自己肯定感が低い人は、相手が自分を愛していることを心の底から信じることができません。そのため、相手の愛情を何度も何度も確認しようとします。これは、まるで、底の抜けたバケツに水を注ぎ続けるようなものです。どんなに愛情を注いでも、決して満たされることはありません。
2. 幼少期の経験
**「愛着スタイル」**という言葉を聞いたことがありますか?
これは、幼少期に親などの養育者との間で築かれる、人間関係のパターンです。
- 不安定型愛着スタイル:幼少期に、養育者からの愛情が不安定だったり、一貫性がなかったりすると、大人になってからも、「人はいつか自分を裏切る」「愛は永遠ではない」という不安を抱えやすくなります。このような愛着スタイルを持つ人は、恋愛関係でも相手の愛情を常に疑ってしまい、試し行為に走りやすくなります。
- 恐れ・回避型愛着スタイル:親からの愛情を期待しても裏切られたり、厳しく叱られたりした経験があると、「人に頼るのは怖い」「心を許すと傷つけられる」という思いを抱えがちです。しかし、心の奥底では愛情を求めているため、相手に近づきたい気持ちと、傷つくのが怖いという気持ちの間で葛藤し、試し行為のような矛盾した行動をとってしまいます。
3. 過去の恋愛経験
過去にひどい裏切りを経験したり、愛する人を失ったりした経験も、試し行為の原因になります。
「前の恋人に浮気された」「突然別れを告げられた」といったトラウマが、今の恋人との関係にも影を落とし、「また同じことが起こるのではないか」という不安から、相手を試してしまうのです。
4. コミュニケーション不足
自分の気持ちをうまく言葉で表現するのが苦手な人も、試し行為に走りがちです。
「本当はもっとかまってほしい」「最近、寂しい」という気持ちを素直に言えない代わりに、わざと困らせるような行動をとって、相手の注意を引こうとします。
これは、まるで小さい子どもが、親の気を引くためにいたずらをするのと似ています。相手に自分の気持ちを分かってほしいという、切ない叫びなのです。
試し行為をされたときの対処法
もしあなたが、恋人から試し行為をされたら、どうすればいいのでしょうか?
試されていると分かると、**「どうしてわかってくれないの?」と怒りを感じたり、「もう疲れた…」**と諦めそうになったりするかもしれません。
しかし、その感情のままに対応してしまうと、関係は悪化する一方です。冷静に、そして建設的に対処することが大切です。
【その1】まず、自分自身の心を落ち着かせる
試し行為をされると、感情的になりやすいものです。しかし、感情的に反応すると、相手の思う壺になってしまう可能性があります。
まずは、**「これは試し行為なんだな」**と冷静に状況を分析し、深呼吸をして、自分の心を落ち着かせましょう。
【その2】相手の気持ちに寄り添う
「もう別れる」と言われたら、**「分かった、じゃあ別れよう」と突き放すのではなく、「どうして、そんな風に思うの?」**と、相手の気持ちに寄り添う姿勢を見せましょう。
試し行為の背景にある「不安」や「寂しさ」を理解しようとすることで、相手は「この人は私のことを理解しようとしてくれている」と感じ、少しずつ心を開いてくれるかもしれません。
ただし、これはあくまで、あなたが心に余裕がある場合です。無理に寄り添う必要はありません。
【その3】冷静に、自分の気持ちを伝える
相手の気持ちに寄り添うと同時に、あなたの気持ちを冷静に伝えることも重要です。
- 「『別れる』と言われると、私はとても悲しい気持ちになる」
- 「あなたが他の子と遊ぶのは自由だけど、私は嫉妬してしまうから、少しつらい」
このように、「I(アイ)メッセージ」を使って、あなたがどう感じたかを伝えることで、相手は自分の行動があなたにどんな影響を与えているかを知ることができます。
【その4】建設的な解決策を話し合う
もし、あなたが相手との関係を続けたいと望むなら、感情的な対話ではなく、建設的な解決策を話し合いましょう。
- 「寂しい時は、無理に我慢しないで『寂しい』と素直に伝えてくれると嬉しいな」
- 「不安な気持ちになる時は、一緒に解決策を考えていきたい」
このような提案をすることで、相手も「どうすればいいのか」という具体的な行動を考えるきっかけになります。
最後に試し行為に関するちょっと面白い小話
最後に、試し行為に関する面白い小話を一つご紹介します。
古代ローマ時代の詩人オウィディウスの著作『恋愛術』には、恋人の愛情を試すための**「可愛らしい嘘」**のテクニックが書かれています。
例えば、**「他の異性からの贈り物をわざと見えるところに置いておく」**というものです。これにより、相手の嫉妬を誘い、愛情を確かめることができる、と書かれているのです。
これは、現代の試し行為と似ていますね。大昔から、人は恋人の愛情を確かめるために、様々な工夫をしていたようです。
また、興味深いことに、この「恋愛術」は、現代の心理学においても、**「嫉妬は愛情の証拠」**という考え方と通じる部分があります。もちろん、過度な嫉妬は関係を壊しますが、適度な嫉妬は、相手への関心や愛情を示すサインと捉えることもできるのです。
このような昔の人の知恵を知ると、試し行為は、単なる現代の問題ではなく、時代を超えた人間の普遍的な感情なんだな、と少し面白く感じませんか?
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